CRTとは — テキーラを認証するしくみ

第1章 テキーラの基礎 | 最終更新: 2026-08-12

植えて間もない若いアガベが整然と並ぶ畑。CRTは作付けの段階から畑を登録・追跡する(現地撮影)

テキーラのボトルには必ず NOM という4桁の番号があります。この番号を発行し、蒸留所を検査し、「これはテキーラである」と保証しているのが CRT という組織です。テキーラが「名乗るだけでは名乗れない酒」であることの、実務を担っている存在です。

登場する3つのもの — 規格・監督機関・業界団体

名称正体役割
NOM-006-SCFI-2012 メキシコ公式規格(法令) テキーラの定義そのもの。原料・産地・クラス・度数・添加物の上限などを定める
CRT
Consejo Regulador del Tequila
認証機関(非営利団体) 規格どおりに造られているかを検査・認証し、NOM番号を付与する
CNIT
Cámara Nacional de la Industria Tequilera
業界団体 テキーラ産業の代弁・振興・統計公表。生産量などの数字はここからも出る
混同されやすいので整理すると、ルールを決めるのが規格(NOM)、守られているか見張るのがCRT、業界の利益を代表するのがCNITです。「CRTが規格を作っている」と説明されることがありますが、正確にはCRTは規格を執行する側です。

CRTは何をしているのか

CRTは1994年5月17日に非営利団体として設立されました。メキシコ経済省の標準化総局に認められた認証機関で、主な仕事は次のとおりです。

  • 蒸留所の認証とNOM番号の付与 — 施設ごとに固有の番号を発行する
  • アガベの登録・追跡 — 畑の作付けから収穫まで記録し、産地外のアガベが混ざらないようにする
  • 製造工程の立ち会い・検査 — 蒸留所に検査員が常駐・巡回する
  • 分析試験 — 成分を検査し、規格に適合しているかを判定する
  • ブランドの登録 — 国内・海外ボトリングのブランドを管理する
  • 原産地呼称の国際的な保護 — 各国での「テキーラ」表示の監視

360

認証プロデューサー

2025年

2,525

国内ブランド

812

海外ボトリングブランド

出典: CRT 公表値/Tequila Tracker によるCRTブランドリスト集計(2025年)

この数字が示すのは、ブランドは3,300以上あるのに、実際に造っている蒸留所は360しかないという構造です。ひとつの蒸留所が何十ものブランドを製造しているため、ラベルが違っても中身の出身地が同じということが日常的に起こります。

だからNOM番号が効く

この構造を飲み手の側から突破する唯一の手がかりが、ボトル裏のNOM番号です。

NOMは蒸留所に対して付与されます。したがって——

  • NOMが同じ2本は、同じ施設・同じ設備・同じ職人が造っている
  • 無関係に見える2ブランドの中身が、実はよく似ていることがある
  • 気に入った1本のNOMを控えれば、同じ造り手の別ブランドを外さずに探せる

テキーラの街の蒸留所データベースは、まさにこのために作っています。NOMから引くと、その蒸留所の銘柄が一覧で出ます。

CRTが保証していること・していないこと

内容
保証している 規格への適合。指定地域の登録アガベを使い、定められた製法・度数・クラスで造られていること
保証していない 味の良し悪し。そして無添加であること — 規格は1%まで添加物を認めており、CRT認証は「無添加の証明」ではありません

ここは誤解が多いところです。CRTマークは「本物のテキーラである」ことの証明であって、「良いテキーラである」ことの証明ではありません。添加物の論点については無添加テキーラとは何かで詳しく扱っています。

テキーラの街も点数はつけません。CRTが品質の等級を付けないのと同じ理由で、味の優劣は他人が決めるものではないと考えているからです。代わりに載せているのは「どこで・何人が・実際に楽しんだか」という記録です。

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主な参照: CRT公式(設立1994年5月17日・役割)/ NOM-006-SCFI-2012(メキシコ公式規格)/ Tequila Tracker によるCRTブランドリスト集計(2025年)。