テイスティングの基本 — 点数をつけずに、好みを見つける
テイスティングというと「正解を当てる訓練」のように聞こえますが、逆です。自分が何を美味しいと感じるかを、自分の言葉で持てるようになること。それができると、次の一本を人任せにせず選べるようになります。
点数をつけない、という立場
テキーラの街は点数をつけません。理由は単純で、見知らぬ他人が別々の好みでつけた点の平均には、あなたにとっての意味がほとんどないからです。
「92点」と言われても、その人が樽の甘さを好むのか、青いアガベ感を好むのかがわからなければ、自分に合うかは判断できません。それより役に立つのは「どんな味だったか」「どこで誰と飲んだか」という具体です。
風味はどこから来るのか
テキーラの香りは大きく3層に分けて考えると整理できます。中心にアガベ、その外に製法、いちばん外に樽です。
- アガベ由来どの一杯にもある土台
- 製法で乗る窯・発酵・蒸留の選択
- 樽で乗る熟成の長さで増える
この地図があると、感じた香りを「これはアガベ由来だな」「これは樽だな」と仕分けできます。仕分けができると、自分が好きなのは中心なのか外側なのかがわかる。それがそのまま「次に買うべきクラス」の答えになります。
飲む前に — グラスと温度
| おすすめ | 理由 | |
|---|---|---|
| グラス | 飲み口がすぼまったもの (グレンケアン、白ワイングラス等) | 香りが上に集まる。ショットグラスは香りが逃げて何もわからない |
| 温度 | 常温(18〜22℃) | 冷やすと香りが閉じる。キンキンに冷やすのは味を隠す飲み方 |
| 量 | グラスの底が隠れる程度 | 少量で十分。多いとアルコールで鼻が疲れる |
4つの手順
1. 見る
色を見ます。ただし色の濃さから熟成期間を推測しないこと。着色料が認められているので、色は当てになりません(詳しくはこちら)。見るのは粘性です。グラスを回したとき壁を伝う脚(レガス)が遅いなら、度数が高いか、糖やグリセリンが入っている可能性があります。
2. 嗅ぐ — 口を開けて
ここがいちばん大事で、いちばん間違えられている工程です。
鼻をグラスに突っ込んで思い切り吸わないでください。 40%のアルコールが鼻の粘膜を刺激して、その後しばらく何も感じられなくなります。
- グラスは顎の下から始める。そこから少しずつ鼻に近づける
- 口を軽く開けて嗅ぐ。鼻と口に分散してアルコール刺激が和らぐ
- 2〜3回に分けて。1回目は全体、2回目で細部を探す
3. 含む — 転がしてから飲む
少量を口に含み、すぐ飲み込まずに舌の上で転がします。5秒ほど。甘みは舌先、苦味は奥、酸は側面で感じます。
初めの1杯目はアルコールの刺激しか感じないことがよくあります。これは正常です。1杯目で口を慣らし、2杯目から本番だと思ってください。
4. 余韻を測る
飲み込んだあと、味がどれくらい残るか。短い=悪いではありません。 すっと消えるブランコは食中に強いですし、長い余韻は食後にゆっくり向き合うのに向きます。用途が違うだけです。
チェイサーの使い方
水(常温)Agua
- やり方
- 一杯ごとに口をすすぐ。氷なしの常温が望ましい
- 出やすい味
- 舌をリセットする。次の一杯が正しく味わえる
サングリータSangrita
- やり方
- トマト・柑橘・チリの伝統的なチェイサー。テキーラと交互に少しずつ
- 出やすい味
- 酸と辛味が味を切り替える。メキシコの定番の楽しみ方
飲み比べるなら、こう並べる
2本以上あるなら、変数を1つだけ変えると違いが立ちます。
| 比べ方 | 何がわかるか |
|---|---|
| 同じ蒸留所のブランコとレポサド | 樽が何を足して、何を覆うか |
| 違う蒸留所のブランコ同士 | 製法と土地の違い。いちばん差が出る組み合わせ |
| 100%アガベとミクスト | 原料の差。一度やると戻れなくなる |
| タオナとローラーミル | 搾汁の違い(つくり方) |
並べる順は淡いものから濃いものへ。逆にすると、樽の強い一杯のあとではブランコが何も感じられなくなります。
記録するとき、何を書くか
点数の代わりに、この3つを残すと後で効きます。
- 思い出した具体物 — 「焼き芋」「濡れた土」「白胡椒」。抽象語(芳醇、上品)より、思い浮かんだ物の名前のほうが後で自分に伝わります
- 好きか、そうでもないか — 良し悪しではなく、自分との相性だけ
- どこで、誰と — 味の記憶は場面と一緒に残ります。同じ酒でも状況で印象は変わる。それでいいのです
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主な参照: NOM-006-SCFI-2012(メキシコ公式規格。着色料・度数の規定)/ CRT(テキーラ規制委員会)公表情報。 テイスティングの手順・風味の分類はテキーラの街による整理で、公式規格が定めるものではありません。 感じ方には個人差があります。